ヒトメタニューモウイルス院内アウトブレイク終息のお知らせ

 医療法人松柏会榎坂病院におきまして2020年1月に入院中の患者様に発熱、喀痰を伴う咳嗽、咽頭痛を呈する方が同時期に複数発生し、ヒトメタニューモウイルスによる院内感染と判断したことをご報告いたしました(第1報2020年2月22日)。その後の経緯について改めてご報告いたします。

 2020年1月21日以降上述の上気道炎症状を呈する方が入院患者様に複数発生し、一部の方には胸部CTにて気管支肺炎~肺炎像がみられました。1月30日に大阪府吹田保健所にご報告、2月5日より大阪大学医学部附属病院感染制御部、大阪健康安全基盤研究所にもご相談させて頂き対策を講じて参りました。行政及び感染対策の専門家の方々のご助言を頂き、感染防止対策(手指衛生の徹底、個人防護具の適正使用、院内環境整備、消毒の徹底、感染の疑われる患者様の隔離など)を徹底してまいりました。

 2020年3月7日を最後にヒトメタニューモウイルス感染症の疑われる患者様は発生しておらず、2020年3月19日に終息と判断いたしましたのでご報告いたします。

 入院中の患者様、ご家族、ご面会の皆様、周辺医療機関の皆様はじめ多くの方々に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

 ヒトメタニューモウイルスについては終息となりましたが、病院職員一同更なる院内感染対策の強化、徹底に努める所存でございます。

 最後になりましたが本件においてご指導賜りました大阪府吹田保健所、大阪大学医学部附属病院感染制御部、大阪健康安全基盤研究所の皆様に深く感謝申し上げます。


2020年3月23日
榎坂病院 院長 関山 隆史



ヒトメタニューモウイルスの関与が疑われる呼吸器感染症の集団発生とその対応について

(第一報)

【1.概要】
 当院において2020年1月21日以降、発熱、喀痰を伴う喀嗽、咽頭痛等を呈する入院患者様が同時期に複数発生したため、院内感染を疑い1月30日に大阪府吹田保健所に報告、2月5日より大阪大学医学部附属病院感染制御部にもご相談させて頂き対策を講じて参りました。
 うち、胸部CT検査で肺炎または気管支肺炎と診断された方が16名、その他の方は上気道炎と診断しております。
2月21日現在、有症者は6名、累計患者数は77名(うち患者67名、医療スタッフ10名)となっています。ほとんどの方が3~16日の経過で軽快されておりますが、そのうち5名は、内科的治療を要する状態と判断され、他院へ転院しております。
 患者様の同意を得て、咽頭ぬぐい液の検査を行ったところ、6検体中5検体でヒトメタニューモウイルスが陽性になりました。また、同時に他の呼吸器ウイルスや細菌の検査を実施しましたが、ヒトメタニューモウイルス以外の有意な病原体は認められませんでした。これらのことより、今回の事象をヒトメタニューモウイルスの院内感染と判断いたしました。
 当院において類似した症状の患者様が多数発生した事実を重く受け止め、現在、大阪府吹田保健所、大阪大学医学部附属病院感染制御部、大阪健康安全基盤研究所のご支援を受けながら、感染の終息に向けて病院をあげて対策を講じているところです。

【2.感染対策】
院内感染対策委員会が中心となり、院内での情報共有を行い以下の感染防止策の徹底に努めております。
 ① 入院制限
 ② 手指衛生(スタッフ、患者様とも)
 ③ 個人防護具(手袋やエプロン等)の適正使用
 ④ 環境整備の徹底(高頻度接触面の頻回の消毒等)
 ⑤ 発症した患者様の速やかな隔離
 ⑥ 院内作業療法、行事等を中止(濃厚接触の回避)

【3.今後の対応】
大阪府吹田保健所、大阪大学医学部附属病院感染制御部、大阪健康安全基盤研究所のご指導をいただきながら、上記感染対策のさらなる徹底により、感染拡大の防止と、発症した患者様の重症化防止を図り、院内感染の早期終息に努めて参ります。
 入院中の患者様やご家族をはじめ各方面にはご心配とご迷惑をおかけしますが、当院の院内感染対策にご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
今後の経過につきましては、当院のホームページにて随時報告させていただきます。

  ※ヒトメタニューモウイルスについて
主に小児で呼吸器感染症の原因となることが知られていますが、成人でも上気道炎症状、重症化すると肺炎を引き起こすことが報告されています。


2020年2月22日

榎坂病院 院長 関山 隆史